世界で一番静かな場所~「無響室」ってどんなところ?
2週前の記事の中で
「0dB(ゼロデシベル)」について少し触れたところ、知らなかった!というお声をたくさんいただきました。
※「完全防音」はありえない?~防音室の『聴こえない』のメカニズム
そこで簡単におさらいです。
「0dB」は実は無音ではありません。
人が聞き取れる最小の音圧レベルのことを指します。
ですので、「マイナスdB」という音も存在します。
なるほど。
では、「世界で一番静かな場所」ってどこかご存じですか?
タイトルに出てしまっていましたね、答えは「無響室」です。
アメリカ ワシントン州にあるMicrosoft社の無響室は、-20.6dB(?!)で、2015年にギネス記録に認定されています。
今回は、この「無響室」について少しお話してみましょう。
「無響室(むきょうしつ)」とは
特定の分野の方にはおなじみですが、普段なかなか耳にすることのない単語ですよね。
無響室とは、音の反射を極限までなくし、無視できるほど小さくなるように設計した部屋のことを指します。
遮音と吸音の極み、とでも言いましょうか。
通常、室内で発生した音は、空気中を伝わって直接耳に届くほか、壁や天井などの固い面に反射して、その音が再び空気中を伝わり耳に届く(反響)、などのルートをたどります。
ところが無響室は、壁や天井、床などの面を全て吸音処理しており、音の反射が起こらないように設計されています。
反射が起こらない部屋=反響しない部屋=「無響室」というわけです。
反響が起こらないと、音はどのように聞こえると思いますか?
例えば、通常の室内で自分以外の誰かが手を叩いたとしましょう。
- ・空気中を伝わって直接聞こえる音
- ・壁に反射して届く音
では、無響室内ではどうでしょう。
反射する音がないため、耳は直接届く音しか拾うことができません。
そのため、どこで手を叩いても、自分の耳元で鳴っているように聞こえるのだそうです。
更に、外からの音も遮断されています。
手も叩かず、じっと静かにしていると、自分の心臓の鼓動や脈拍、関節の擦れる音などが聞こえてくるそうです。
人によっては気分が悪くなったり、幻聴が出たりすることもあるらしく、先ほどご紹介したギネス記録の無響室では45分間以上耐えた人はいないという記録もあるようです。
無響室の目的は実験や開発
では、そんな不気味な(?)無響室、一体何のために使われているのでしょうか。
主には実験や開発です。
工業製品や家電製品の動作音の測定、マイクやスピーカーなどの音響機器における、音量や指向性の研究などに使われています。
身近な例では、例えば最近の家電製品って、音がすごく静かですよね。
通常の部屋ではノイズに紛れてしまうような小さな音を、無響室では正確に測定したり聴き比べたるすることができます。
ほかには、車やバイクのエンジンなどもそうですね。
より静音性に優れた商品を開発するために、どうしてもこういった部屋が必要なのです。
ただし、家電などはあまりにも静かすぎると、本当に動いているのだろうかと不安になってしまうという声もあり、多少はノイズがあった方が好まれる場合もあるとのこと。
そのほかにも、野外など建物がない場所での音場シミュレーションや、音響心理実験などに使われることもあるそうですよ。
そうそう、ジョン・ケージが作曲した「4分33秒」という「無音」の曲をご存じの方も多いでしょう。
4分33秒間、まったく無音という名曲(迷曲?)なのですが、ジョン・ケージは、ハーバードの無響室でこの曲のヒントを得たそうですよ。
「無響室」はなかなかレアな空間ですが、施設によっては体験できるところもあるようです。
大人の社会科見学を計画してみても楽しそうですよね。
無響室ではありませんが、環境スペースのショールームでは無音に近い静かな空間を体験することができます。
防音体験はご予約制になっております。
お気軽にお問い合わせください。
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。