文系さんにおススメ!言葉の意味から防音室の性能値を知る!
防音の話をする時に避けては通れないいくつかの数値があります。
でも、「数字が苦手」って方、多いですよね。
そこで今回は、「言葉の意味から防音室の性能値を知る」をテーマに、特に重要な以下の3つの数値についてご説明したいと思います。
「D値」
「L値(LL、LH)」
「N値(NC値)」
少し長いですが、最後までお付き合いください♪
■遮音性能を測る・・・D値:遮音等級「D」の数値
「ディーち」と読みます。「D-60(ディーろくじゅう)」「D-65(ディーろくじゅうご)」のように数字をつけて性能を表します。防音室を検討している皆さんが、一番よく目にする数値なのではないでしょうか。
「D」が何の略かわかれば、数値に対する理解が一気に深まりますよ。
「D」とは「Difference(=差)」のDです。
正式には、「Sound Pressure Level Difference」(音圧レベル差)と言います。
「差」というからには、何かと何かの差、ですよね?
例えば、この図の左の部屋でピアノが鳴っているとしましょう。
この時の音の大きさ(音圧レベル)を90dB(デシベル)とします。
この状態で、壁を隔てた右の部屋の音の大きさ(音圧レベル)が40dBだった場合、左右の部屋で聞こえる音の差は
90-40=50 となりますね。
この50という数値、これがD値なのです。
この図の場合は、中央の壁は「D-50」と表されます。
D値は「遮音性能値(=どれだけ音を遮断できるか、という値)」とも呼ばれ、数値が大きいほど遮音性能は高くなります。
簡単に、遮音等級と聞こえの関係をまとめた表がありますのでご覧ください。
また、建物の用途によって推奨される遮音等級が決められています。
「D値」という言葉の意味と、数値の体感イメージが何となく掴めたのではないでしょうか。
【おさらい】
D値のDは「Difference(=差)」のD
■床衝撃音を測る・・・L値:遮音等級「L」の数値
「エルち」と読みます。よくマンションのカタログなどで見かける数値ですね。「LL-45(エルエルよんじゅうご)」「LL-40(エルエルよんじゅう)」などと数字が付きます。
・・・おっと、なぜかLが2個ついている??
この訳は後ほどしっかりご説明しますので、ひとまず「LL-40」の頭の「L」からいきますね。
「L値」の「L」とは「Level」のLです。
何のレベルか?というと、
「Floor Impact Sound Level(床衝撃音レベル)」と言います。
イメージ湧いてきましたね。
先ほどの「D値」の時は、隣り合った部屋の間で音圧レベルの測定をしましたが、「L値」の場合は上下の部屋の間で床衝撃音の測定をします。
専用の機械を使い、上の階でわざと床に音を立てます。それを下の階で騒音計を使って測定するのです。
バングマシンは、子どもが飛び跳ねたりするような「重量床衝撃音」の測定に、
タッピングマシンは、スプーンを床に落としたり、スリッパでぱたぱたと歩く時のような「軽量床衝撃音」の計測に使用します。
ただし、L値はD値の時のように「差」を測るのではありません。
差ではなく、単純に、下の階に伝わっている衝撃のレベル(Level)を測定します。
なので、数値が大きいということは、それだけ伝わっている衝撃が大きい、ということになります。
なので、「L-40」と「L-50」では、L-40の方が静か、というわけです。
さて、冒頭の話に戻ります。
「LL-40」のように、Lが2個ついていましたね。この、後ろの「L」についてご説明しますね。
実はこの床衝撃音レベル、「LL」「LH」と表示する場合もあります。
そして、先ほど床衝撃音には「軽量床衝撃音」「重量床衝撃音」があることをご説明しました。
そう、勘のいい方はもうお気づきでしょう。
「LL」の「L」はLightの「L」を
「LH」の「H」はHeavyの「H」をそれぞれ意味しています。
正式には
「LL」とは Light-Weight Floor Impact Source 「軽量床衝撃源」
「LH」とは Heavy-Weight Floor Impact Source 「重量床衝撃源」を表した数値となっています。
マンションなどでは、主に「LL値」が示されていることが多いです。
こちらも同様に、建物の用途によって推奨されるレベルが決められています。
「L値」という言葉の意味と、数値の体感イメージが何となく掴めたのではないでしょうか。
【おさらい】
L値のLは「Level(=レベル)」のL
LightとHeavyの2種類があります。
■室内のうるささを測る・・・N値・NC値:騒音等級「N」の数値
「エヌち」「エヌシーち」と読みます。
「N-35(エヌさんじゅうご)」「NC-40(エヌシーよんじゅう)」などと数字が付きます。
はい、ここまで読んでくださった方は「N」が何の頭文字だか気になっていますよね。
「N」は「Noise(=騒音)」のNです。
ということは、数字が大きい=ノイズが大きい(うるさい)、ということになりますね。
数字が小さいほど静かで、集合住宅の居室ではN-35からN-40程度、録音スタジオなどではN-20からN-25程度、が一般的です。
N値もNC値も「室内騒音レベル」と呼ばれており、室内で意図的に音を出していない状態でも聞こえてくる外部騒音や給排水などの設備騒音を数値化したものです。
どちらも同じように用いられますが、L.L.Beranekという方が提案した、特に空調などの※定常騒音に使用されるものを「NC値」と呼んで区別しています。
(※定常騒音:騒音レベルがほぼ一定で、変動がほとんどない騒音のこと)
ちなみに、NC値の「C」は「Criteria(=クライテリア・基準)」のCですが、ここまでは覚えなくても大丈夫でしょう。
使用例:
A「昨日測定に行ったお宅、NC-25(エヌシーにじゅうご)だったんだよ。」
B「うわ、めっちゃ静か!」
実はこのN値(NC値)って、防音室を作る際にとても重要なファクターなんです。
例えば、全く同じスペックの防音室を作ったとしても、周りの室内がとても静かだった(N値が低い)場合、ほんの少し漏れる小さな音でも拾って聞こえてしまうことが想像できますよね。
逆に、室内がそこまで静かでない(N値が高い)場合、遮音性能をめいっぱい高く設定しなくても、漏れる音が室内騒音に紛れるため、あまり気にならないといったことも起こります。
あらかじめ室内騒音レベル(N値・NC値)を測定しておくことで、過小・過剰なスペックにならないように最適な遮音性能をご提案することができるのです。
【おさらい】
N値のNは「Noise(=ノイズ)」のN
いかがでしたでしょうか。
今回は、防音室の性能に関する数値を、数字が苦手な方でもわかりやすいようにご説明させていただきました。
より詳しい内容を知りたくなった方は「防音の豆知識」のページを、
これらの数値をどのようにして測定しているか知りたくなった方は「建築音響測定」のページも併せてぜひご覧になってみてくださいね。
※この記事は以前のブログの内容を元に再構成しました。