脳がマッサージされる音~「ASMR」ってご存知ですか?
突然ですが、みなさま「ASMR」ってご存知ですか?
若い方、特に10代くらいの方の間では、今更?そんなの常識!なくらい認知度が高い「ASMR」ですが、30代以上の方にとっては、あまりなじみのない単語かも知れませんね。
ちょうど先週のブログで、音を聞いてイライラするメカニズムを、脳科学的な見地からご説明させていただきましたが、本日はその真逆。
不思議な心地よさで「脳がとろける音」とも言われる「ASMR」についてのお話です。
■「ASMR」とは?
正式名称は「Autonomous Sensory Meridian Response(自律感覚絶頂反応)」と言います。
略称は「アサムラ」「アサマー」「アスマー」「エー・エス・エム・アール」など。
私たちが普段何気なく聞いている音をマイクで録音し、それをヘッドフォンやイヤフォンで聞くことによって、癒されたり、ゾクゾクするような心地よさを感じたりするような反応や感覚のことです。その不思議な気持ちよさから「脳のマッサージ」などと表現されることもあるそうです。
日本では、2015年頃から動画サイトを中心に広く知られるようになりました。
2019年上半期には、女子中学生・女子高生流行語大賞の「コトバ部門」で1位を獲得し、日経トレンディ発表の2020年ヒット予測でも8位にランクインしています。
■具体的にどんな音?
本のページをめくる「サラッ」という音。
炭酸水のはじける「シュワシュワ」という音。
キーボードをタッピングする「カタカタ」という音。
髪の毛を切る「シャクッ」っという音。
スライムを潰す「ぶちゅっ」という音。
固形石鹸を彫刻刀で削る「ゴリゴリゴリッ」という音・・・
など、本当に多岐にわたっているのですが、
一番人気なのは「咀嚼音」なのだそうです。
例えば、フライドチキン。
カリッとした衣を噛む音、その中のジューシーなお肉にかぶりつく、ちょっぴり湿度の高い音。
想像しただけで、なかなかの快感ですよね。
その他にも、
コーンフレークやグラノーラを食べる時のザクザクした音、
たくあんのパリポリした音、などなど・・・。
でも、ちょっと待って。
咀嚼音ってどちらかというと、人前では嫌われることの多い音ですよね。
食べている時にくちゃくちゃと音を立てることは、マナー的にも美しくありません。
それなのになぜ「ASMR」として絶大な人気を集めているのでしょうか?
■自分の感覚として捉えることのできる音だから
実は「ASMR」は、スピーカーなどを通して聞くよりも、ヘッドフォンやイヤフォンで聞くのが一般的。
特に咀嚼音の場合、ヘッドフォンやイヤフォンで聞くことによって、他人が発生させている音ではなく、あたかも自分が食べている音であるかのように聞こえ、感じるのだそうです。
その他にも「耳かきの音」なんてものもあります。
これは「バイノーラル録音(バイノーラル=両耳の、という意味)」と言って、特殊なマイクを使い、左右・上下・更には遠近の距離感などを感じられるように立体的に録音された耳かきの音をイヤフォンで聞くことで、まるで自分が気持ちよく耳かきをしてもらっているかのような感覚になるというもの。
その理由として、次のようなことが考えられています。
脳の中で、聴覚を処理する部分と触覚を処理する部分はとても近い場所にあります。そのため、音を聞くことによって起こる聴覚の刺激が、その近くの触覚の処理分野にも影響を与えてしまい、その結果、ゾクゾクするような感覚が起きてしまう可能性が高いのだそうです。
■聴覚は皮膚感覚に近い?
他にも、聴覚についての様々な説を探すことができました。
金沢工業大学で音楽音響学や音楽心理学がご専門の山田真司教授によると、人間の聴覚は魚類などが持つ側線の名残だと考えられているのだそうです。
側線とは、身体のどちら側から水が流れているかを感じ取るための器官で、それが発達して「内耳」という耳の一番奥にある部分になったのだと言われています。側線とは、いわば皮膚感覚であるため、聴覚と皮膚感覚はとても近い関係にあるのだそうです。
聞いているだけなのに、まるで自分が体験しているような感覚になるのには、こういった体のつくりや進化に起因していると思うと、とても興味深いですね。
本日は、脳のマッサージとも言われる「ASMR」についてお話しさせていただきました。
この「ASMR」ですが、実は娯楽のためだけではなく、ストレス解消や睡眠導入の効果を目的として作成されたりもするんです。
医学的に実証されてはいないものの、実際にASMRによって慢性的な疼痛が緩和されたという研究結果もあるのだそうです。
色々とストレスの溜まる日々が続いていますが、そんな時はこういった音の力なども借りて上手にストレスを発散させたりリラックスしたりしていきましょう!