同じ大きさのはずなのに、同じ大きさに聴こえない?「人間の耳」と「聴こえやすい周波数」の関係
先日は、年に一度の健康診断を受けて参りました。
春からのコロナ自粛による運動不足で大変なことになっていましたが、何とか健康体には収まっており、ほっと一安心している筆者です。そこで、やはり目につくのは防音設備です。
聴力検査室内は外部騒音を遮断した、とても静かな空間となっています。
広いものだと設置場所も大変でしょうし、環境を作るのにも技術とコストがかかってしまいますから、多少狭くとも我慢するしかないのでしょう。
聴力は加齢やイヤホンの大音量などによって、否が応でも聴力は低下していくもの。
しかも最初は気づきにくい特徴を持っていますから、早期発見、予防のためにも聴力検査は本当に大事です。
本日は人間の耳と聴こえる周波数の関係について掘り下げます。
周波数と「聞こえる音」について
周波数とは、音の波が1秒間に振動する回数であり、単位は「Hz(ヘルツ)」で表します。
周波数の違いは、そのまま音の高低となり、周波数の低い(振動回数の少ない)音は低い音、周波数の高い(振動回数の多い)音は高い音、となります。
参考頁:1月30日付ブログ「何となく知っている「周波数」、きちんと説明できますか?」
人の耳は、約20Hz~20,000Hz(=20kHz(キロヘルツ))という広範囲の音を聞くことができ、これを「可聴周波数帯域」と呼んでいます。
可聴周波数帯域の中でも、聞こえやすい周波数と聞こえにくい周波数があるのです。
この、「聞こえやすい」「聞こえにくい」って一体どういうことでしょうか?
実は人間の耳は、マイクのように機械的に、一定に音を拾うわけではありません。
周波数によって耳に聞こえる音の大きさ(=耳の感度)が変わるのです。
この聞こえ方をグラフで表したものが「等ラウドネス曲線」です。
「等ラウドネス曲線」とは
簡単にご説明します。
左にある縦軸は「音圧レベル(dB)」です。
数字が大きいほど、音が大きいと思ってください。
一方、下の横軸は「周波数(Hz)」です。
赤い曲線が数本、うねうねと表示されています。
これは「人の耳に聞こえる音の大きさ」です。
もう少し専門的に言い換えるなら「ラウドネス(音の聴覚的な強さ)」を示す曲線で、単位は「phon(ホンもしくはフォン)」で表されます。
この曲線のちょうど1000Hz付近に「100」「80」「60」などの数字が見えますが、この数字が「phon」に該当します。
例えば、上から4本目の「40ホン」に該当する赤い曲線を見ていきましょう。
ちょうど1,000Hzのところで左の音圧レベルを見ると、40dBになっています。
これは、「1,000Hzの周波数で40dBの音圧レベルの音は、人の耳で40ホンの大きさに聴こえる」ということを意味しています。
「聴こえる」感覚を規格化
この「40ホンの大きさに聴こえる」ということが重要です。
等ラウドネス曲線とは、人の耳で同じ音の大きさに聴こえる、周波数と音圧レベルの関係を表したグラフです。
例えば「40」の曲線を1,000Hzから左にたどると、200Hz付近では50dBという数値になっています。
これは、「200Hzの周波数で50dBの音圧レベルの音は、人の耳で40ホンの大きさに聴こえる」ということであり、逆に言い換えると、「40ホンに聴こえるためには、200Hzの周波数なら50dBの音圧レベルが必要」となります。
つまりは「同じ音圧レベルであっても、周波数が違うと同じ大きさに聴こえない」ことです。
もう一度「40」の曲線を見てみましょう。
3,000~4,000Hz付近で曲線がぐっと落ち込んでいますよね。
また、なだらかではありますが、400Hzから800Hzあたりにもゆるやかな谷が見て取れます。
つまり、この付近の周波数の音は、音圧レベルが低くても、すなわち小さな音でも「よく聞こえる」、「聞こえやすい」ということになるのです。
以前のブログで、蚊の羽音である350Hz~600Hzあたりはよく聞こえる周波数帯だ、という話を書きましたが(【蚊の音を徹底理解!】近年めっきり少なくなった、憎いアイツと周波数の話)、それよりも更によく聞こえる周波数帯(3,000~4,000Hz)があるということがわかります。
逆に100Hz以下の低い周波数帯域や、5,000Hz以上の高い音は聞こえにくいという特徴があることがよくわかるグラフになっています。
当グラフは周波数や音圧レベルというのは物理的に測定することのできる、ある意味絶対的な数値です
しかし個人的に驚いたのが、「同じ音の大きさに聴こえる」という感覚値が規格化されているという点です。
2003年の規格改正時には、延べ約19,000人の被験者によって200万回もの実験・測定が行われたとのことです。
等ラウドネス曲線は身近なもので使われている
ここまで学んだ「等ラウドネス曲線」ですが、以下のようなもの利用されます。
利用例
- ・家電製品のお知らせ音
- ・音楽制作・MIXにおいて、全体の音量バランスを取り、違う高さの音が等しく聴こえるための基準にする
実は私たちの身近な物や音楽のために、利用されているのです。
赤ちゃんの泣き声も、人間が聞こえやすい3,000~4,000Hzの周波数帯域になっているようです。
赤ちゃんの泣き声を敏感に聞き取れるように、人の耳が進化していったのだろうと考えると、なんだかほっこりします。
本日は、「人間の耳」と「聴こえやすい周波数」のお話でした。
音にまつわる専門的なお話も、できるだけわかりやすくお伝えしていきますので、こまめにサイトをチェックしてみてください。