【自宅にレコーディングスタジオを】音楽スタジオの設計施工時の留意点を解説
レコーディングスタジオをつくるにあたり、「設計前に知っておくべきこと」や「施工するときの注意点」など、いざレコーディングスタジオを作るとなると何に気を付けて、どうやって進めていけばいいのかわからない!という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回の記事では、レコーディングスタジオを作る際の計画から、設計時の留意点、施工までを説明します。
レコーディングスタジオとは
レコーディングスタジオは、用途として大きく2種類に分けることができます。
- ・音楽専用の録音スタジオ
- ・テレビや映画、ゲームといった映像作品の音源収録を目的としたスタジオ
また一般的にレコーディングスタジオは、スタジオエリアとコントロールルームの2部屋で構成されます。
スタジオエリアは演奏したり、ボーカルの歌声などを収録する部屋です。
コントロールルームは、スタジオエリアからのモニターとスピーカーを通して、音を録音したり編集・調整といった作業を行います。
以上を踏まえて、レコーディングスタジオの構成は、録音する楽器編成や録音スタイルによって大きく異なります。
スタジオ用途の明確化
まずは、設計を計画しているレコーディングスタジオの用途をしっかりと考えましょう。
快適なスタジオ・レコーディングやコントロールルームでのミキシング作業を行うためには、空調・換気設備、良質で安定した音響電源、リラックスできる照明プラン等の設備関係についても、計画段階で十分な検討を行う必要があります。
用途の分け方の手順としては、まずは「楽器を使うのか?」「声を録音したいのか?」を区別します。
さらに「どんな楽器を使うか」「どんな音を出したいか」などについても考えていくことも重要です。
どんな用途でレコーディングスタジオを利用するのかを明確にしましょう。
レコーディングスタジオに求められる音響条件
レコーディングスタジオは、外部施設に迷惑をかけず、外部騒音に影響を受けずに録音ができる環境であることが求められます。
求められる音響条件に下記3つがあります。
- ・外へ漏れる音、振動が問題にならないこと
- ・外部からの騒音や設備騒音が少なく静かであること
- ・室内が響きすぎたり音質を悪くする反射音が無いこと
この3つの条件をクリアできるよう、レコーディングスタジオを設計する計画を立てねばなりません。
防音工事の詳細はコチラ「レコーディングスタジオの防音工事」
スタジオに必要な音響性能
音楽スタジオでは次の3つの音響性能が必要になります。
- ・スタジオ作業に支障のない静けさであること(暗騒音レベル)
- ・隣室、及び上下階への音漏れが問題ないこと(遮音性能)
- ・作業がスムーズに行える適度な響きであること(室内音場)
つまり、各スタジオの規模や用途に応じて、計画を練る必要があります。
音を遮断する為の遮音計画と、室内の響きを調整する音場計画の両面から立てていきます。
音響プランニング
レコーディングスタジオに必要な3つの音響性能を紹介しました。
それらを満たすプランニングとして、遮音計画と音場計画を紹介します。
遮音計画
遮音計画は「音」と「振動」の両面から検討を行う必要があります。
録音が行える静かな部屋をつくるためには、音だけではなく振動も遮断しなくてはなりません。
振動は建築の構造体を伝搬して内装材を揺らし、室内に音として放射されます。
例えば、機械設備や歩行音、扉開閉時の衝撃音が上げられます。
さらに、スタジオから放出される音への配慮も大切です。
演奏音やコントロールルームでのモニター音に対しても、ビルの躯体に入射して振動成分として構造体を伝幡し、再び音として放射される「二次固体音」の成分も無視できなくなります。
また、通常施工される間仕切り壁(固定遮音壁)だけでは、どんなに壁を厚くしても先に述べた二次固体音の影響によって、一定の遮音性能以上が得られなくなります。
これは振動の減衰が、音の減衰と比べて極めて小さいことによります。
より一層の静けさが必要な場合には、固定遮音層の内側に「浮構造」と呼ばれる防振構造が必要になるわけです。
したがって、スタジオの遮音計画では、部屋の用途に応じて必要とされる静けさのレベルによって「浮構造」を採用するかどうかを決定し、周辺騒音の大きさと目標の静けさから必要遮音量を設定して遮音構造を検討します。
目標とする室内暗騒音レベルを確保するためには、建築的な遮音構造だけではなく、他の設備も考慮しなくてはなりません。
遮音構造を貫通する空調ダクトや電気設備、防災設備、弱電設備の配管処理を同じ遮音レベルで行う必要があります。
すなわち、貫通部の遮音処理や浮構造部分での振動絶縁処理を、確実に行う必要があるのです。
機械設備の音だけでなく空調設備については、空調ガラリやダクトの管壁からダクトに侵入した音が伝搬して、隣室のガラリやダクトの管壁から透過する「クロストーク」の影響も注意が必要です。
音場計画
室内音場の計画は、部屋の用途に応じた適切な響きとするために、内装材(吸音・反射)の検討を行います。
まず、スタジオの部屋の形状が出来るだけ不整形になるように考えます。
これは、室内に平行となる面がないようにして、音響的な拡散性を高める音の障害を無くすためです。
対向する壁が完全な平行面である場合、壁面間で音が減衰せずに行き来しますから、高音域ではフラッター・エコーを、低音域では定在波という音響的な障害が生じます。
少なくとも、片側の壁を吸音面にせざるを得ないのです。
計画場所の条件にもよりますが、面積や楽器(音源)、マイクの配置も含めて検討します。
次に、室内の吸音です。
部屋の内装によって、音のエネルギーを何%程度、吸音するか設定します。
つまり、マイクアレンジで音が変化するように、楽器の位置とマイク位置が大切で、この位置関係に基づいた反射面と吸音面のレイアウトが重要になります。
楽器の位置を想定して吸音面の配置を行い、低音域から高音域まで、バランスの良い適切な室内平均吸音率が得られるように考えることが大切です。
音響設計の留意点
レコーディングスタジオの音響設計は、建築と電気音響設備の設計からなります。
建築は、室形状、防音・防振構造、内装仕上・構造を建築的に設計するもので、録音スタジオ・編集スタジオなどより良い音響空間を創造します。
電気音響設備の設計は、設計された空間に適したスピーカーなどの音響設備を設計することです。
より良い快適な音響空間を創造するため、建築・電気音響の両面から音響設計をしていく必要があります。
レコーディングスタジオの防音設計施工の詳細はコチラ
防音設計の目標値
部屋の防音性能は、D値で評価されます。
「殆ど聞こえなくなる」や「あまり聞こえない」等では個人の聴覚・感覚になってしまいます。
その為の基準としてD値が設定されました。
D値とは、JIS A 1419:1992(※) に規定される遮音等級のことで、数値が大きいほど遮音性能が高いことを示します。
また、D値の性能評価において、検討する周波数帯も減らせる音圧も決まっています。
(※)2000.1に改訂されたJIS A 1419-1:2000 におけるDr 値がD値に相当します。
D値と人の聞こえ方(感じ方)の対応は、下記表のような関係になっています。
録音スタジオの防音・防振構造
材料の重量が増えると、遮音性能は上がります。
これは単一部材の遮音性能が、入射音の周波数と、材料の面密度の対数に比例するからです。
しかし質量則では、重量を2倍(同一材なら厚みを2倍)にしても、6dBしか遮音量は増加しません。
この質量則以上の遮音量を得る方法は、部材間に空気層をとった二重壁を構成することです。
さらに、この部材間の振動伝達を抑えることにより、防音性能は向上します。
よって、録音スタジオのような高度な防音性能が必要な場合は、防振設計が必要不可欠です。
音には、大きく2種類あります
1つは、「空気伝播音」といって空気を伝播するもの。
もう1つは「固体伝播音」といって壁・床・天井などの物体内を伝播するものです。
「固体伝播音」は、その物体が振動することで音が伝播します。
ですので、壁などを厚くするだけでなく、防振構造(浮遮音層)が必要です。
特にいろいろなテナントが入る複合ビルなどで工事をする場合は、床に伝播する振動に対して、防振構造が必要不可欠となります。
尚、苦情の発生している録音スタジオでは防振構造が十分ではない、もしくは防振構造自体が無いこともあり注意が必要です。
室内騒音
音質の良い録音をするには、室内の静けさが必要となります。
室内で生じる騒音源は、「室内で生じる設備騒音」と「外部から侵入する騒音」の大きく2種類です。
室内騒音の設計目標は、下記の表に示すようにNC-15~20程度です。
また外部騒音については、建設予定地の環境騒音を事前調査し、十分検討した上での設計が必要です。
室内音響設計
レコーディングスタジオを作る上で求められるものは、以下のものです。
- ・防振、防音性能
- ・良好な音環境
- ・芸術性を引き出す内装設計
そのためには、以下のような取組みが必要です。
音響障害の防止
高音質で快適な音空間を実現するため、響きの長さ(残響時間)を調整することが求められます。
さらには、響きの質(音質や音色)を設計することも必要です。
特に、平行に対向する反射性の大きな面がある場合は、音響障害が発生することもありますので対策が必要です。
最適残響時間
残響時間を最適にすることは、原音に忠実に録音するために必要です。
その為には、悪影響が少ない音空間が必要です。
再生する環境を考慮していない響きが少ない空間や、響きすぎて原音がわからないような部屋では、良好な音環境とは言えません。
レコーディングスタジオの残響時間は、録音する音楽のジャンルや好みによって異なります。
一般的に、最適な残響時間を得られる室内平均吸音力は、20%~40%だとされています。
また、好みによって残響や反射面、吸音面を変えられるような、可変装置を設置するスタジオも増えています。
防音工事の詳細はコチラ「レコーディングスタジオの防音工事」
施工
レコーディングスタジオの施工については、下記に当社の事例やお客様の声を記載していますので、ぜひご参考ください。
施工事例
お客様の声
さいごに
今回の記事では、「レコーディングスタジオの用途明確化の必要性」から「施工」までの流れを解説しました。
スタジオを作る際の3つの音響条件
- ・外へ漏れる音、振動が問題にならないこと
- ・外部からの騒音や設備騒音が少なく静かであること
- ・室内が響きすぎたり音質を悪くする反射音が無いこと
スタジオに必要な音響性能
- ・スタジオ作業に支障のない静けさであること。(暗騒音レベル)
- ・隣室、及び上下階への音漏れが問題ないこと。(遮音性能)
- ・作業がスムーズに行える適度な響きであること。(室内音場)
音響性能を満たす為のプランニング
- ・遮音計画
- ・音場計画
レコーディングスタジオについての御相談はぜひ当社へお声がけください。
防音工事の詳細はコチラ「レコーディングスタジオの防音工事」