映画館「 CINEMA Chupki TABATA 」様
映画鑑賞に来られたお客様が、遮音・音場の設計に感動されています
CINEMA Chupki TABATA代表 平塚さま(公式サイト)
映画館「 CINEMA Chupki TABATA 」様 | |
施工種別: | 映画館 |
建物タイプ: | ビル |
地域: | 東京都 |
目の不自由な人も、耳の不自由な人も、どんな人も一緒に映画を楽しめる日本初のユニバーサルシアター CINEMA Chupki TABATA。 たくさんの協力者の募金によって、日本一やさしい映画館が2016年9月に北区東田端でオープンしました。 今回は映画館の開業までの経緯から、現在に至るまで、取材させていただきました。 |
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2001年から始まった活動。念願の映画館オープンへ2016年9月に念願の映画館をオープン
平塚さまは2016年3月にビルの不動産会社さまからご紹介いただき、翌月にご契約。
工事費用は約1,250万円。
同年6月から工事が始まり、8月に完工・お引渡しさせていただきました。
ビル1階の区画は映画館となりました。Chupkiはアイヌ語で「自然界の光」。
目の不自由な方や耳の不自由な方、車いすの方、小さなお子様連れの方など、だれもがいつでも安心して、一緒に映画を楽しむことができる、すべてのお客様を対象とした映画館です。
当日は休館日にもかかわらず、快く迎えてくださいました。映画鑑賞をみんなで自由に楽しみたい一心から、音声ガイドを開発
シネマチュプキを設立したのは、2001年から目の不自由な人たちと共に映画鑑賞を楽しむために、言葉による映像の解説(音声ガイド)をいち早く手がけ、視覚障がい者の映画鑑賞をサポートしてきた「バリアフリー映画鑑賞推進団体City Lights」というボランティア団体です。
始めた当時は現在のように音声ガイドが普及しておらず、視覚障害者が映画鑑賞を諦めていた時代です。
団体立ち上げ当初は、どのようなことをすれば目の不自由な方が映画鑑賞を楽しめるのか、週1回の研究会から始まりました。
最初は耳元で作品の情景や、役者の表情を耳元で伝えながら映画鑑賞を行っていましたが、作品内容によっては周囲に声が漏れてしまい、映画館側から注意を受けてしまうこともしばしばありました。
仲間や協力者と試行錯誤の末、イヤホンで聞ける機器を開発し、みんなで映画を楽しめる音声ガイドが完成したのです。 -
「社会的障害者のいない映画館」を目指して活動の中で感じた喜びと映画館の可能性
映画の音声ガイドが好評となると、コミュニティの輪が広がっていきます。団体で映画館へ行き、さらに次の映画館へと、草の根的に輪が拡大していきました。なにも講じなかったら届かなったであろう人へ、映画が届いた喜びは計り知れません。
そういった活動の結果、周囲の映画館や映画関係者が、目の不自由な方も映画館で安心して鑑賞できることを認知し始めたのです。
他にも大きな発見もありました。
映画館によって上映される時間帯や作品、映画館自体の仕組みなどが、視覚障害者に対して優しくないことに気づきました。
自分で映画館をつくれば誰もが自由に楽しめる空間を提供できる!と感じ、夢の映画館のために貯金を始めたのです。仲間や協力者と「夢のバリアフリー映画館」の実現へ
活動が大きくなると、映画常設館への気持ちに胸が膨らみます。
「いろいろな人と一緒に映画を観る豊かさ」をもっとたくさんの方に知ってもらいたい。映画鑑賞補助ツールとして、晴眼者にも音声ガイドを聴いてもらいたいと思うようになりました。
「いつか映画館をつくりたい」という夢が、いつしか「すべての上映作品に音声ガイドが付いている、バリアフリー映画館をつくりたい」に変わっていったのです。そしてこの夢を、より広く世間に向けて発信していこうと考えた結果、私たちの思い描く夢のバリアフリー映画館を年に一度、一日だけ体験できるお祭り「シティ・ライツ映画館」を開催しました。映画祭と同時に始めた「夢の映画館募金」も、途中から震災復興に切り替えたものの、お陰様で着々と集まっていきました。 -
映画常設館までの険しい道のり...。信念とご縁により見えてきた夢の映画館前身「アートスペース・チュプキ」で得た社会のニーズ
夢を叶えるために、まずは物件探しから始めました。
自宅の近場を探したところ、ある1つのデザイナーズ物件が目に留まります。早速ビルのオーナーさんに相談し、2014年11月に契約しました。興行場法の規定により上映回数は一ヶ月に4回までと制限されましたが、上映日には多くのお客様が足を運んでくださいました。
立地や内装も好評で、イベント共催の話も沢山いただくようになります。
ミニコンサートや絵本朗読、マクロビのお菓子作りなど、とても魅力的なイベントを開催し、多くの方と繋がりができました。
建物オーナー側の事情もあり、このアートスペース・チュプキは2016年2月に閉館しましたが、「映画館にこのような設備があったら嬉しい!」というニーズを上映活動の出会いの中で知ることができました。多くの支援者により、クラウドファンディングは大成功
アートスペース・チュプキの閉館後、映画館の運営が可能な物件をすぐに探しました。しかし直接、物件を見に行ってもインターネット上でもイメージに合う物件がありません。テナント探しは困難を極めました。諦めかけた2016年の3月、現在の物件に出会いました。興行場法も消防法もクリアし、あとは映画館をつくれる会社が必須です。映画館の設計ができる会社は全くわからないため、不動産に訪ねたところ、アップリンクさんを工事された環境スペースに出会いました。対応がとても丁寧で要望を聞き入れていただいたため、依頼を決定しました。物件の契約金だけではなく、防音工事や音響内装工事の費用も必要です。周囲の支えもあり、夢の映画館募金とクラウドファンディングで支援者を募りました。多くの方に支えていただき、開始早々に約1000万円が集まりました。その後もご支援いただき、無事に目標金額1500万円を達成したのです。 -
プロフェッショナルにより完成した映画館は、多くのお客様を笑顔に各方面のプロフェッショナルとともに映画館が無事に完成
防音工事は環境スペースに決定し、音響監督である岩波美和さん、バリアフリーイベントのコーディネーターとして様々な経験をされてきた柳瀬勝彦さんを監修に迎えました。身体に不自由を抱えた方や子育て中にママにとって優しい設計を目指しながら、音響も最高品質な映画館にしようと工事を進めました。
映画館がある田端は建物も多く、自然がありません。
環境スペースへ森の中で野外上映を屋内で行っている雰囲気にしたい旨を伝えると、敷物である芝生からこだわっていただき、とても心地の良い雰囲気にしていただきました。
親子鑑賞室も照明と音量を自由に調整できるため、好評をいただいております。
防音工事だけではなく消防法にのっとった上で、さまざまな願いをかなえていただきました。多くの方々に愛される映画館は、人を幸せにする信念のもと運営される
映画館がオープンした後、多くの方々に祝っていただきました。
私自身が名画座出身のため、新作映画をドンドン出していくというよりは、毎月テーマを決めて上映しています。
ありがたいことにオープンから老若男女を問わず、多くの方に足を運んでいただき、著名人からも好評をいただいております。爆音上映もたまにやるため、強いサブウーハーを入れていますが、地響きのような重低音があっても音漏れによる苦情はありません。コロナ禍によって運営がつらい時期もありましたが、今後は映画館で上映することの価値を発信していき、オンラインでは得られないような体験を伝えていきます。駅から映画館までカフェがないため、カフェ兼映画が鑑賞できるカフェスペースをつくることも次の目標としてあります。※取材&記事作成:川名
参考書籍:夢のユニバーサルシアター(著作:平塚様)