西洋の教会をイメージ 声楽が気持ちよく響く音楽ホール
お客様データ概要
お客様名 | 音楽ホール 鏑木様 |
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用途 | 音楽ホール |
広さ | 41.80㎡(内寸35.9㎡) |
建物構造 | 木造 |
施工日数 | 約4か月 |
施工エリア | 東京都 |
防音室を作ったきっかけ
もともと駐車場だった土地の有効活用で、最初はアパートを建てようかとお考えだった鏑木様。お嬢様が声楽をなさっていたこともあり、ご家族のあいだで「音楽ホールがあれば面白いよね」などと冗談で話していたことが、しだいに具体化していったことがきっかけです。
都内ではアカペラで気持ちよく声を出せるホールが意外と少ないと感じていらっしゃいました。小規模でも声が良く響くホールが欲しいと思っていた時期とちょうどタイミングが合ったことから、音楽ホールを建物から造ろうとご決断されました。
お客様の要望
周囲は住宅街なので音が外に漏れないようにしたいというのは絶対条件でした。外を走る車の音などがホール内部に聞こえてしまってもいけません。そのうえで、気持ちよく歌える音の響きを強くご希望でした。
音楽ホールの音響はもちろんのことですが、以前リハーサルなどでよくご利用なさっていた防音室は、とても窮屈で長時間いられなかったと伺いました。そのような部屋だと、喉にも耳にも負担がかかってしまいます。長時間の練習でも居心地の良いリハーサル室も併せてご希望でした。
解決方法
お嬢様がなさっているのは、声楽の中でもアカペラです。もともとアカペラは西洋の教会で演奏されていたものなので、できるだけ教会の音響に近づけたいと思い、実際に数か所の教会に測定のご協力をいただいて音響調査を行いました。人の声の周波数、それぞれの周波数帯域での残響などを細かく測定・分析して、声楽に最適な室内音響設計を実施いたしました。
壁や天井を曲面にしたり、良い響きを作る建材を採用するなど、音響面で様々な工夫を凝らしました。
また、音楽ホールの外観・内装も教会風のデザインを取り入れ、クラシカルモダンな雰囲気に。模型やパースなどで視覚的にイメージできるようにご提案をいたしました。
ご成約
様々な角度・視点からご提案をさせていただき、
お客様のご要望通りの性能・プランでのご成約となりました。
実施設計開始
施工開始
施工中の様子
※クリックで画像の全体を表示できます
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1.地鎮祭
土地の神様をお祀りし、工事の安全を祈願します。
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2.建築工事
今回は建築からの施工です。基礎、柱をしっかり組み上げます。
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3.防振吊
固定壁・固定天井を増し貼ります。天井には、浮き構造を造るための防振金具を設置し、天井下地を組んでいきます。
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4.浮遮音層工事
固定天井の増し貼り後、設置した防振金具にLGS(Light Gauge Steel)で浮天井の下地を組みます。
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5.浮遮音層工事
近くで見るとこのような構造です。少しカーブした斜めのラインになっているのがおわかりでしょうか。この形状が、後に優れた音響効果を発揮することになります。
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6.浮遮音層工事
壁も、躯体から浮かせた構造にするため、天井同様にLGSで下地を組みます。
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7.換気設備工事
換気ダクトなどは、浮構造の中に隠蔽します。
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8.換気設備工事
少し後の工程になりますが、ダクトにも鉛を巻いたり開口部に吸音処理を施して、音漏れを防止します。
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9.浮遮音層工事
組みあがったLGSの下地に、グラスウールなどの吸音材を充填していきます。
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10.浮遮音層工事
浮遮音層の下地に、遮音効果のある石膏ボードを貼っていきます。写真は扉まわりの壁を施工している様子です。
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11.浮床遮音層工事
既存の床から浮かせた構造を造るため、PSブロックという防振用のゴムが埋め込まれた緩衝材を敷き込み、更に防水シートと固定用のラス網を設置します。
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12.浮床遮音層工事
コンクリートを打設します。この後、ホールの床は最終的にタイルで仕上げます。
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13.反射層形成
浮構造の壁に合板を貼ったら、ホール内の音響を整えるための施工に入ります。
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14.反射層形成
ピラミッド型の反射体です。壁に設置することでホール内の音の響きが良くなるように、ホールの容積や音源の周波数などから緻密に設計しています。
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15.反射層形成
反射体の裏側には吸音材を貼っています。反射と吸音のバランスも細かく計算されています。
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16.反射層形成
配置する場所を決めて・・
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17.反射層形成
一旦外して位置をマーキングします。
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18.反射層形成
片側の壁面に、大きさの違う反射体を5個取り付けます。逆側の壁も同様です。設置しない部分の壁面には、合板の上から更に石膏ボードを重ねて貼っています。
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19.反射層形成
壁面に、先ほどの反射体を設置します。浮天井の石膏ボードの上からはタル木下地を組みます。カーブした斜めの形状は音の響きを良くするために計算された角度となっています。
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20.反射層形成
天井の様子です。中央からは外光が取り入れられるようになっています。
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21.反射層形成
アーチ型の意匠は、教会のイメージを踏襲しています。アーチの内側には大理石を配し、デザインと音響効果を両立させています。
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22.反射層形成
天井のタル木下地に、グラスウール・石膏ボードを重ね、最終的に波型の反射層で仕上げます。音を反射・拡散させるための形状です。バランス良くスポットライトも配置しています。
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23.完成
壁面のピラミッド型の反射体、天井の形状、アーチの内側の大理石、床のタイルなど、全て緻密な音響設計に基づいて、材質や形状を決めました。
完了測定
施工担当者からのコメント
ホールをご利用された方々が、音の響きや雰囲気を楽しんでくださっていると伺いました。
音の響きは、何度もシミュレーションを重ねました。教会風に仕上げた内部のデザインも、反射体の設計から照明の位置や色まで、かなりこだわって設計しましたので、ご満足いただけて本当に嬉しく思います。
今後何年もお使いいただくうちにメンテナンスが必要になることもあるかと思いますが、しっかり対応させていただきますので、どうぞご安心ください!