【D値・L値・N値】誰でもわかる防音室の性能にまつわる数値の話
みなさま、こんにちは。
関東甲信越も梅雨入りし、紫陽花の映える季節になりましたね。
さて前回のブログで、専門用語がわかりづらい、という話をご紹介させていだきました。
そこで、今回は防音室の性能の話をする時に避けて通れない数値の話をしたいと思います。
今回説明させていただくのは、以下の3つに絞りました。
- ・D値
- ・L値(LL、LH)
- ・N値(NC値)
これだけでも知っていれば、カタログなどを見た時に、性能値を理解しやすくなると思います。
少し長めですが、どうぞお付き合いください。
D値「音圧レベル差」
D値(ディーち) :遮音等級Dの数値
防音室を作ろうと思った時、おそらく一番よく目にする数値ではないでしょうか。
「D-60(ディーろくじゅう)」「D-65(ディーろくじゅうご)」のように数字がつきます。
「D」とはずばり「Difference(=差)」のDを表しているのです。
正式には、「Sound Pressure Level Difference」(音圧レベル差)と言います。
図をご覧ください。
壁を隔てて、左右に2つの部屋がありますね。
左の部屋にスピーカーがあるのがおわかりでしょうか?
このスピーカーから音を鳴らします。そして、音源のある左の部屋と、壁を隔てた右の部屋でそれぞれ音の大きさを測定します。
この大きさ(音圧レベル)の差が「D」なのです。
壁がある為、当然右の部屋で聞こえる大きさは、左の部屋よりも小さくなりますよね。
どれだけ小さくなっているか、ということはつまり、真ん中の壁がどれだけ音を遮断したか、ということになり、この値が「D値」となるわけです。
具体的に数字を入れてみましょう。
左の部屋で、90デシベル(デシベル=dB、音の大きさの単位)の音が鳴っているとします。
その時、右の部屋で音の大きさを測定すると、40デシベルでした。
すると、左右の部屋で聞こえる音の差は、90-40=50 となりますね。
つまり、この壁の遮音性能は「D-50」ということになります。
数値は、大きいほど遮音性能が高くなります。
D値のDは「Difference(=差)」のD
L値「床衝撃音レベル」
L値(エルち) :遮音等級Lの数値
さて次に、マンションなどでよく目にする「L値」というものがあります。
この「L」は「Level」のLです。
何のレベルか?というと、「Floor Impact Sound Level」(床衝撃音レベル) というわけです。
上の階の音(=衝撃)が下の部屋にどのくらい響いているかを計測します。
また、図をご覧ください。
先ほどの「D値」の時は、隣り合った部屋の間で音圧レベルの計測をしましたが、今度は上下の部屋の間で床衝撃音の計測をします。
上の階に2種類の装置があるのがおわかりでしょうか?
衝撃には「重量床衝撃源」といって、子どもが飛び跳ねるような重たいものと「軽量床衝撃源」という、スプーンを床に落としたようなものや、スリッパでぱたぱたと歩く時のような軽いものの2種類があり、それぞれを上階で発生させて、下の階で衝撃音を計測する方法を取ります。
これは、先ほどのD値のように「差」を測るものではないので、数値が大きいほど衝撃が大きい、ということになります。
すなわち、「L-40」と「L-55」では、「L-40」の方が静か、ということです。
ところで、前回のブログを読んでくださった方はお気づきかもしれませんが、「LL40」なんて数値をご紹介いたしました。
実はこの床衝撃音レベル、「LL」「LH」と表示する場合もあるのです。
これは、Lightの「L」とHeavyの「H」を意味しており・・・
そう、もうおわかりですね。
「LL」は Light-Weight Floor Impact Source 軽量床衝撃源、「LH」は Heavy-Weight Floor Impact Source 重量床衝撃源をそれぞれ表した数値となっているのです。
床衝撃音レベルの全般的な数字は「L値」、軽量床衝撃源、重量床衝撃源、というように特定する場合は「LL」「LH」を使用します。
L値のLは「Level」のL、LightとHeavyの2種類あります。
N値・NC値「騒音レベル」
N値(エヌち)・NC値(エヌシーち) :騒音等級Nの数値
最後です。
ここまで読んでくださった方は、きっと「N」も何かの頭文字だとうすうすお気づきのことでしょう。
解答を先に。
「N」は「Noise(=騒音)」のNです。
・・・ということは、数値が大きい方がノイズが大きい=うるさい、ということですね!
集合住宅の居室ではN-35からN-40程度、録音スタジオなどではN-20からN-25程度、が一般的です。
N値もNC値も「室内騒音レベル」と呼ばれており、外部騒音や給排水などの設備騒音を数値化したものです。
どちらも同じように用いられますが、L.L.Beranekという方が提案した、特に空調などの※定常騒音に使用されるものを「NC値」と呼んで区別しています。
(※定常騒音:騒音レベルがほぼ一定で、変動がほとんどない騒音のこと)
ちなみに、NC値の「C」は「Criteria(=クライテリア・基準)」のCですが、ここまでは覚えなくても大丈夫でしょう。
例えば、線路沿いのお部屋と、閑静な住宅街のお部屋とでは、そもそもの室内の静かさ・うるささが違いますよね?
防音室を作る時、全く同じスペックのものを作ったとしても、周りの室内がとても静かだった場合、小さな音でも拾って聞こえやすくなってしまうことが想像できますよね。
逆のパターンは、、室内がそこまで静かでない場合、規格通りの遮音性能ではオーバースペックになってしまうことも考えられます。もったいない。
そうならないように、あらかじめ室内騒音レベル(N値、NC値)を測定して、ご要望に見合った遮音性能を提案することができるのが、環境スペースの良いところなのです。
N値のNは「Noise(=ノイズ)」のN
いかがでしたか。
今回は、防音室の性能にまつわる、3つの数値についてご説明させていただきましたが、より詳しい内容をお知りになりたい方は、「防音の豆知識」ページや「建築音響測定」のページもぜひ併せてご覧ください。