音の響きをコントロール!「残響時間」がひとつの目安
突然ですが、「残響時間」ってご存知ですか?
音響、建築などに詳しい方であれば、今更ご説明の必要もありませんが、そうでない方にとっては「何となくイメージできるけど、詳しい定義までは・・・?」
といった感じではないでしょうか。
例えば防音工事を行なうにしても、ただ音を止めるだけで良い場合と防音室の中で鳴らす音の響きにも気を配らなければならない場合があります。
後者の場合は、周波数特性や吸音率、残響時間など緻密な「音響設計」が必要になってきます。
本日は、この中の「残響時間」について、身近な部屋を例にとってご説明したいと思います♪
そもそも「残響」って?
お風呂の中で歌うと、声が響いて上手くなったように聞こえますよね。
自分の声が、発声を止めた後も壁や天井に反射を繰り返して響きあう、これが「残響」です。
反面、服がたっぷり詰まったクローゼットの中では、声がくぐもって全く響きませんよね。
まずは、こんなイメージを持っていただければ良いと思います。
「残響時間」の定義
「音が聞こえなくなるまでの時間のことだよね」と思った方。
惜しい。50点!
考え方は正解ですが、『聞こえなくなるまで』とはいったい?
聴力の良い人もいれば、そうでない人もいる。
もっと客観的な基準が欲しいところですよね。
ということで、音圧レベル「dB(デシベル)」を活用するのです。
残響時間とは、特定の音場における残響の具合を示す指標の一つであり、音源が発音を止めてから、残響音が60dB減衰するまでの時間をいう。(Wikipediaより)
なるほど。
具体的に数値を当てはめてみましょう。
ここに、ピアノを演奏する部屋があります。
そしてピアノの音を100dBとします。
100-60=40ですから、ピアノの音を止めてから40dBになるまでに1.3秒かかったとしたら・・・
この部屋の「残響時間」は1.3秒、ということになります。
40dBってどのくらいの大きさかと言うと、ささやき声、小雨の降る音、換気扇の音、などが挙げられています。
意外と聞こえる音量なんですよね。
「60dB減衰するまでの時間」・・・?
あれ? じゃあ、もしピアノの音が60dB以下だったらどうやって計測するの?と思った方。
細かい説明は省略しますが、実は100dBが40dBになる時も、60dBが0dBになる時も、減るエネルギーの量はどちらも同じです。
※「0dB」って何?と思った方はこちらもご参照ください
●「完全防音」はありえない?~防音室の『聴こえない』のメカニズム
なので、計測する時は60dBより大きな音を発生させて計測すれば良いだけのことなのでした。
場所によって様々!最適残響時間を解説
残響について、なんとなくわかっていただけたと思います。
では、その部屋の用途によって、好ましい残響時間が違うということも大体予測できますよね。
これは残響時間の目安を表した代表的な表です。
録音・放送スタジオは、余計な反響音はいらないので残響時間は短めです。
オーディオルームは、人によって好みはありますが、音が響きすぎると、オーディオ機器本来の音質に影響するといったことから、比較的短めな残響時間に設定されます。
いわゆる、劇場・ホールでもジャンルによって残響時間が大きく違います。
豊かな響きが要求されるのが、クラシック音楽専用のコンサートホール。
国内最高峰と謳われるサントリーホールの残響時間は、2.1秒(満席時)です。
その他、
- ・オーチャードホール:1.9秒
- ・すみだトリフォニーホール:2.0秒
- ・ミューザ川崎シンフォニーホール:2.0秒
- ・横浜みなとみらい大ホール:2.1秒
NHK交響楽団の本拠地、NHKホールは1.6秒とやや短めな残響時間なので、3階席など上階では音があまり響いてこないのですが、その分ひとつひとつの音の解像度が良いので、録音にはとても向いているホールです。
一方、オペラやミュージカルなどの公演では、歌詞やせりふが明瞭に聞き取れなくてはいけないので、残響は少し短めになります。
- ・新国立劇場:1.4~1.6秒
- ・神奈川県民ホール(本館):1.3秒
- ・日生劇場:1.3秒(※空席時)
演劇がメインの劇場では、更に短い残響時間です。
- ・神奈川芸術劇場(KAAT):1.0秒
- ・大阪 新歌舞伎座:0.8秒
このように、用途に応じて、どのように音を響かせたらよいかを綿密に設計していくことが重要になります。
ただ防音するだけではだめなんですね。
ありがたいことに、環境スペースでは毎日様々なお客様からのお問合せをいただいております。
ピアノ室やドラム室のほかにもライブハウス、リハーサルスタジオ、音楽ホールなど、音響設計が必要なお部屋がとても多いのです。
お客様のご要望を伺いながら、最適な音空間をご提案していくことが私たちに求められている仕事だと思っています。
どうぞお気軽にご相談ください。
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