世界一大きい音 とは? その意外な影響も。
突然ですが、以前の記事で、「世界で一番静かな場所」についてご紹介させていただきました。
では、逆は?と思ってしまうのは人間の心理ですね。
ただ、さすがに「一番うるさい場所」を特定するのは無理があるので、今回は「世界一大きい音」についてのお話です♪
まず、身近な音がどのくらいの大きさなのか、簡単にご説明します。
㏈(デシベル)と聞こえ方の目安
このホームページ上でも色々なところに貼ってある表なので、見覚えのある方もいらっしゃるでしょう。
人が「うるさい」と感じる音圧レベルは、概ね70㏈(デシベル)以上からです。
また、10㏈上がるごとに、人の耳では音の大きさが2倍になったように感じます。
ということはつまり、30㏈が40㏈に上がった時の差と100㏈が110㏈に上がった時の差は、数字の上ではどちらも同じ10㏈ですが、体感上ではもっと差があるように聞こえる、ということです。
面白いですよね。
この表では120㏈までしか書いていませんが、例えばあと10㏈上げて「130㏈」になると・・・
体感上では、飛行機のエンジン(プロペラエンジン)の音の「2倍」?!ちょっと想像できませんね。
また、だいたい100㏈を超えたあたりから、痛みなど、聴覚機能に異常があらわれ始め、苦痛を我慢できる限界がだいたい130㏈だと言われています。
更に上げて140㏈。
飛行機のジェットエンジンの離陸時の音を真横で聞いている状態、だそうで、これはもう鼓膜が破れてしまうレベルです。
これをふまえて、地球上で計測された最大の音圧レベル(音の大きさ)は、なんと 172㏈ だそうです。
しかも、音源から160㎞も離れた場所での計測値なんです!!
これは一体何の音かというと、「火山の噴火の音」なんです。
1883年(明治16年)、インドネシアのクラカタウで起きた途方もない規模の大噴火、その噴火の爆発音が160㎞離れたジャカルタで観測されており、それが現在最も大きな音と言われています。
160㎞といえば、東京からなら静岡を少し超えたあたり。
大阪からなら、名古屋のちょっと先あたり。
そんな離れたところでも172㏈だなんて、音源付近ではいったいどれだけの音圧になっていたのでしょうね。
誰か数字に強い方、距離減衰を計算してください・・・
とにかく、とてつもない規模の噴火です。
火山から2,000㎞離れた場所(東京から例えると上海は余裕。台北の手前まで)では、「銃声のような、並外れて大きな音」が、離れた場所(東京からだと香港、マニラあたり)では「大砲のような大きな音」が、また、4,800㎞離れた場所(東京からだとバンコクあたり)でも「遠くで銃声のような音」が聞こえた、と伝えられています。
このように、世界中で火山噴火の音が記録され、その範囲は地球上の13%にも及び、爆発音は実に5日間にもわたって地球を3周したというデータが残っているのです。(データによっては4周と報告されているものもあるそうです。)
ちなみに、地球上の大気の中で出すことのできる音の限界は、194㏈ だそうです。
それ以上の音は空気を通り抜けることができず、「衝撃波」となるのだそう。(アポロの月面ロケットが発射される時に220dBを計測したという説もあるようですが、これはもう「音」ではなく「衝撃」として捉えられているようですね。)
凄まじかったのは音だけではありません。
爆風による気圧の上昇は、ニューヨークやワシントンDCでも観測され(噴火から18時間後!)噴煙は高度27,000mにまで到達し、膨大な量の火山灰の影響で、北半球全体が数年にわたり平均気温が0.5℃から0.8℃も低下したと言われています。
全世界的に異常気象が引き起こされ、ヨーロッパではその後数年間、赤色や七色など不思議な色の太陽が観測されていたそうです。
ところで。
みなさんよくご存じの有名な絵画、ムンクの「叫び」。
ちょっと不気味にも思える背景の色合いは、実はクラカタウ噴火後の不思議な太陽の色がモデルになった、という説もあるそうですよ。
クラカタウの噴火が 1883年、ムンクが「叫び」を描いたのは10年後の1893年のこと。
多くの犠牲者も出た世紀の大噴火ですが、意外なところで、芸術家のインスピレーションの源ともなっていたのですね。
見えない音を数値で表す!
環境スペースの音響測定事業については ※こちら※ をご覧ください。(さすがに172dBは測れませんが。)