【ライブハウスの設計施工】プロ納得の防音対策と音響設計について解説します
新型コロナウイルスの影響で、全国のイベントが中止や延期を余儀なくされています。
中でも矢面に立たされているのがライブハウスです。
残念なことに感染しやすい条件が揃ってしまっているということで、不本意にも注目されてしまいました。
環境スペースでも多くのライブハウスの防音工事のお手伝いをさせていただいております。
「3.11の時には音楽で元気を届けることができたのに今は難しい…。」という声を聞くと、本当にいたたまれない気持ちになります。
本日はライブハウスのお話です。
ライブハウスは大きな防音室。音圧レベルにご注意
基本的な構造はマンションのピアノ防音室や戸建住宅のドラム防音室などと変わりません。
一般住宅の防音室と大きく違うのは、用途を除くと、音量(音圧レベル)なのではないでしょうか。
アコースティックがメインのライブハウスもありますが、多くは生ドラム+スピーカーの大音量を鳴らします。
声援やかけあいもあります。
また、夜間に営業するライブハウスも多いですよね。
地下のライブハウスだから、防音はそこまで考えなくても大丈夫だろうと思っていたら、1階どころか3階のテナントさんからも苦情が来てしまった、なんて話を聞くことがあります。
確かに、地下で音を出すことによって、外(道路)への音漏れは軽減されますが、建物の躯体を伝わる音・振動(固体伝搬音)は地下だからといって防ぐことはできません。
過去の記事で何度もご紹介しているので、いつも読んでくださっている方にはすっかりお馴染みかと思います。
固体伝搬音の対策をするのなら、ライブハウス全体を建物の躯体から離して振動を伝えないようにする構造(浮き構造)が必要になるのです。
ライブハウスのような高い音圧レベルの防音対策として、建物の床(コンクリート)の上に吸音材であるグラスウールを敷き詰め、ビニール、金網でカバーした上から更にコンクリートを打設する「湿式」という工法が用いられています。
床だけでなく天井や壁、エントランスも厳重に防音させていただきましたので、写真のライブハウスはなんとマンションの1階にもかかわらず、住民の方やご近所の方からの苦情もなく、大変ご満足していただきました。
音響が良くないとアーティストを呼べないことも
ライブハウスは防音するだけでなく、音響も重要なポイントです。
「ライブ」と「デッド」という言葉をご存知の方もいらっしゃるでしょう。
ライブ
- 音の響きが長めな状態を指す言葉で、ジャズ系やアコースティックがメインのライブハウスでは「ライブ目」の音響に設計することが多い
デッド
- 余計な音が響きすぎない状態である。ロックやポップスのようなジャンルでは、ミキサーやエフェクターなどで、音を加工する場合もあるため、音が響きすぎるとかえって不都合になる
このようにメインに演奏されるジャンルに応じて、ライブハウス内の音響設計も行われています。
最悪の場合、音響面に重点を置かないと、アーティストさんが音に納得できず、今後呼べなくなるケースもあるようです。
私も取材させていただいた中で、予算を追加してでも音響にこだわって本当に良かったお声もいただきました。
ライブハウス「LOVE,PEACE&SOUL LIVE CAFE」様〜プロ納得の音響と遮音性能で、非常に満足しています〜
コンクリートむき出しの内装もかっこいいのですが、ジャンルによっては音が響きすぎてしまうので、響きを抑える処理(吸音処理)が必要になる場合もあります。
筆者がまだ防音業界のことを全く知らなかったうん十年前のことです。
恥ずかしながら、当時ロックバンドを組んでいたのですが、ある時趣向を変えて、なじみのライブハウスでアンプラグドのライブをさせてもらったことがありました。
その時に「何だかいつもより音が響きにくいなー」と、若造が生意気にも思ってしまったのですが、今思えば、そのライブハウスは「デッド目」で設計されていたので、アンプを通さない生ギターの音が響きにくいのは当然のことだったんですね。
マスター、まだ元気かな。
ライブハウスは観る人も演奏する人も、運営する人も、みんなが幸せになれる空間です。
一日も早くこの難局を乗り越えて、またみんなで幸せになれる日が来ますようにと願うばかりです。