高温多湿な日本の梅雨・・・この気候が日本の音楽を生んだ?
本格的な梅雨ですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。
せっかくなので今日は「音と湿度」についてご紹介します。
音の聞こえ方と湿度の関係
一般的に、「湿度が高いと音がこもって聞こえる」と言われます。
そのため「音が響かない」とか「音の抜けが悪くなる」などと表現されます。
音が響かない理由として、湿度の高い空気は、空気中から多くの水分を含んでいるためです。
湿度の高い空気が振動を吸収してしまうことによって、音がこもって聞こえるのです。
もう少し詳しく見てみましょう。
音にも、低い音や高い音がありますが、この音の高低は「周波数」によって決まっています。
※過去ブログ:「何となく知っている「周波数」、きちんと説明できますか?」
低い音は、持っているエネルギーが大きいので、湿度が高く重たい空気にも影響されにくいという性質を持っています。
(注)ここで言うエネルギーの大小とは、音の大きさ(音圧レベル)の大小とは違うものです。
一方高い音は、波長が短く持っているエネルギーも小さいので、空気中の水分などにエネルギーを吸収されてしまうのです。
そのため、湿度の低い空気中よりも音の減衰(小さくなってしまうこと)が早くなり、その結果「音がこもって」聞こえてしまうのだそうです。
※過去ブログ:「遠くで汽笛を・・・じゃなくて、電車の音を聞きながら。」
L.A.などは平均湿度が30%程度と乾燥しているので、非常に「抜けの良い」音が録れると人気でした。音楽と湿度の意外な関係
音楽と湿度にまつわる話をもうひとつ。
音楽を構成する要素は、「和音(ハーモニー)」「リズム」「メロディー」の3つと言われています
そして、音楽文化を調べてみると、地域によって基本となる要素が異なっていることがわかります。
西洋音楽の基本要素は「和音(ハーモニー)」です。
アフリカ音楽は「リズム」、日本をはじめとする東洋音楽の基本は「メロディー」です。
この違い、実はその地域の環境や建物と深い関わりがあるようなのです。
古い民家や建築物を思い描いてみてください。
日本の建築物の多くは木造です。
木材や畳は、吸湿性があり熱伝導率が低いです。
梅雨がある高温多湿な日本の気候に、実によくマッチした建物なのといえます。
また、木造建築物は、音を吸収しやすいという性質も持っています。
音を出してもすぐに吸収されてしまい、長く響きません。
そのため、日本古来の楽器は「出だしの音を聞かせる」ことが得意な楽器が多いのです。
箏や三味線、琵琶。それから、お囃子の鉦(かね)や笛・太鼓なども同じです。
尺八などは、音を長く伸ばして演奏しているようにも思えますが、出だしの音が強く、アクセントになっているのがわかります。
こういったことから、音を長く重ねて和音(ハーモニー)にするよりも、単音でメロディーを奏でるというスタイルが日本の音楽文化の主流となっていったそうです。
一方、湿度の低いヨーロッパでは、石やレンガ造りの建物を多く見かけます。
これらは木造とは違い、音を響かせる(反響させる)性質の強い建物です。
そのため、いわゆる「クラシック音楽」では出だしの音だけでなく、その後に響く音を幾重にも重ねて和音(ハーモニー)を楽しむような構成が多く見られます。
象徴的なのは教会音楽でしょう。石造りの教会に響くオルガンの音。鳴り始めよりも後ろの音を響かせることで、幻想的で厳かな空気が流れます。
弦楽器を比較してもおもしろいです。
箏や三味線は、爪や撥(ばち)ではじいたり叩いたりするようにして音を出すのに対して、バイオリンなどは弓を「ひいて」演奏します。
これも、「出だしの音」を強調するのか、伸ばす音を聞かせるのかの違いなのではないでしょうか。
文化の違いは「あの歌」にも
延期になってしまった東京オリンピックですが、開催された暁にはきっと何度も耳にすることになるであろう「君が代」。
実は当初はメロディーしかなかったことをご存知でしょうか。
10世紀に編纂された「古今和歌集」の中の短歌を、明治2年に事実上の国歌として採用したのが原型で、その後明治13年にメロディーが付け直されました。その時まだメロディーだけだった「君が代」にハーモニーが付いたのは、それから13年後、付けたのは、フランツ・エッケルトというドイツ人の音楽教師だったそうです。
音や音楽から、その背景に思いを馳せるのは楽しいですね。
改めて、文化というのは、自然や環境の上に成り立っているのだということを感じた梅雨の日でした。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。