骨伝導イヤホンの音漏れの原因は固体伝搬音?音の響き方から考察してみた
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先日、ランニングが趣味の友人から、「いい物買ったんだ♪」というメールが届きました。
きっと、新しいランニングシューズか、最新のトレーニンググッズか何かだと思っていたのですが、見せてもらったものは「骨伝導イヤホン」でした。
ここ数年話題になっているのは知っていましたが、実際に使っている人が周りにいなかった為、実物を見るのは初めてでした。
そもそも、骨伝導イヤホンってどんな商品なのか、簡単にご説明しますね。
通常のイヤホンのように鼓膜へ音を伝えるのでなく、頭蓋骨などに振動を与えることで音が聞こえるしくみを利用したイヤホンです。
音の伝わる経路を簡単に整理すると、このようになります。
通常のイヤホン:イヤホン⇒空気⇒鼓膜⇒蝸牛(かぎゅう)⇒聴覚神経
骨伝導イヤホン:イヤホン⇒頭蓋骨⇒蝸牛(かぎゅう)⇒聴覚神経
※出典:コトバンク
偉大な音楽家、ベートーヴェンにまつわる有名な話がありますよね。
難聴になってからは、口にくわえたタクトをピアノに接触させて、歯を通して振動(音)を感じていたと言われていますが、まさにこの原理です。
せっかくなので、試しに装着させてもらいました♪
こめかみの付近に振動部を当てて固定します。
最初は少し違和感がありましたが、すぐに慣れました。
頭にフィットするので、少々動いてもずれそうにありません。
そして、全く耳を塞がないので解放感があります。
これならランニングしていても周囲の音がはっきり聞こえるので、車や自転車が近づいてきてもわかります。
抜群の安心感です。
自然の音も聞こえるし会話もできるので、散歩や街ブラ、軽く山を散策するような時のお供にしてもいいかもしれませんね。
音質は、通常のイヤホンに比べてどうしても劣るのは、構造上仕方がないのかもしれません。
でも、BGMとして音楽を楽しむ目的であれば全く気にならない音質でした。
デメリットがあるとすれば、多少音漏れがするところ。
実際、頭から外して音量を上げても、うっすらと聴こえてはいますが、同じボリュームで装着すると、少し音漏れが気になるような気がしました。
あれ?振動を伝えるイヤホンなのに音漏れするの?と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
これは、次のようなことが原因です。
イヤホンからの音(振動)は、まず頭蓋骨をスピーカーと同じ原理で振動させます。
先ほどの経路のおさらいです。
骨伝導イヤホン:イヤホン⇒頭蓋骨⇒蝸牛(かぎゅう)⇒聴覚神経
実はこの時、頭蓋骨から蝸牛に伝わるのと同時に体の外に放射される音もあり、これが周囲に聴こえてしまうのだそうです。
どこかで聞いたことのある話・・・。
「固体伝搬音」だ!
※固体伝搬音・・・建物の躯体(床や壁・天井)に入射した音が、物体内を伝わって隣の部屋などに放射する音のこと
固体を伝わる音は、空気中を伝わる音に比べて減衰しにくい(=小さくなりにくい)性質を持っています。
また、条件によっては音が増幅してしまう場合もあります。
骨伝導イヤホンからの音漏れは、固体伝搬音と同じ原理で起こっていたのですね。
とは言え、BGM的に楽しむ程度の音量であれば、よっぽど静かな場所でない限り、周囲の音にもまぎれてほとんど音漏れは気にならないレベルでしたので、ご安心ください。
そういえば、10日ほど前の新聞に、こんな記事があったのを思い出しました。
“聴く”ことあきらめないで つのだ☆ひろさん「耳の不自由な人に音楽を」 2019年10月7日東京新聞
「メリー・ジェーン」でおなじみの つのだ☆ひろさんが取り組んでいる、聴覚障害をもつ方や耳の遠いお年寄りの方に、骨伝導ヘッドホンを使って音楽の素晴らしさを伝えたいという活動が紹介されています。
「運命」を受け止め、乗り越えたベートーヴェンの知恵が、現代の世でも人々に音楽を伝え、力を与えてくれていると思うと、何だか感慨深いものがありますね。