【雑音の不思議】静かな場所がかえって落ち着かない理由
つい先日の話です。
ちょっとした調べものをするために、図書館に出かけました。
日曜の早い時間、人もまばらでとても静か。
これなら集中できそう!と、先ほど借りた本を開いてみたものの、何だか静かすぎて落ち着かない。
結局、図書館よりも近くのカフェの方が集中できた、なんてことがありました。
これ、結構「あるある」なのではないでしょうか。
静かすぎる場所はかえって落ち着かない
リモートワークなどもすっかり浸透して、オフィス以外で仕事をすることも当たり前になってきていますね。
そんな時、つい「静かな場所なら集中できる」と思いがちですが、あまりに静かすぎると神経が過敏になってしまい、かえって集中できなくなってしまいます。
ちなみに、図書館などの静かな場所の音のレベルは40dB程度です。
静かなオフィスは50dB程度、カフェは60dB程度と思ってください。
あまりに静かすぎると、時計の音やキーボードをタイプする音、そのうち、服のこすれる音までもが気になってしまいます。
適度な雑音がある方が、集中力を阻害する余計な音がシャットアウトされるのです。
その理想的な雑音が「ホワイトノイズ」と言われるもので、人の耳に聴こえる可聴域の全ての周波数を均等な強度に設定したノイズです。
地上アナログテレビの、放送終了後の砂嵐。あの音がホワイトノイズです。
元々高い集中力のある人は、こういった雑音が逆効果になる場合もありますが、多くの人はこの「ホワイトノイズ」で集中力が高まる効果を得られます。
カフェに流れる音楽や会話、カップの音などは環境とうまく調和して、ホワイトノイズに近くなります。
カフェで仕事がはかどるのには、こういった理由があるのです。
なら、オフィスでも良いのでは?
それなら、わざわざカフェじゃなくても、オフィスでも良さそうですよね。
静かさも同じくらいだし、適度に雑音もあるし。
でも実は、カフェとオフィスとでは雑音の種類が違うんです。
カフェで雑音を立てている人は自分の知らない人なのに対し、オフィスでは、ほとんどが自分の知っている人。
人間の脳は自動的に、知人の出す音の方を優先度の高い情報として処理してしまうので、より「耳に入ってくる」こととなり、集中力を低下させる要因となるのです。
「カクテルパーティー効果 ※Wikipediaで見る※ 」という言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるでしょう。
五感で受ける情報の全てを均等に脳が処理していたら、情報過多で大変なことになりますよね。
自分に必要な情報かどうかを脳が勝手に判断して、不要な情報が認識されないようなしくみになっているのです。
カフェで聞こえる雑音は、脳に「いらないよー」と判断されるため、会話の内容までが耳に入ってくることもない、「適度な雑音」となるのです。
防音工事への応用
こういったことから、生活の中にも少しは雑音があった方が良さそうだな、と何となく感じていただけたのではないでしょうか。
実際、極端に部屋を静かにしてしまうと、今まで意識していなかったような音が気になってしまいます。
時計の音や電化製品の音なども挙げられます。
ほかにも、「シーン」という耳鳴りのような音を感じたことのある方もいらっしゃるのでは?
あの音の正体は「耳音響放射(じおんきょうほうしゃ)」というもので、決して「気のせい」でも病気でもありません。
静かな場所で脳から聞こえる単調な高音で「生理的耳鳴り」とも呼ばれています。
普段は脳が外部の音を優先的に処理しているので聞こえにくいのですが、無響室※詳しくはこちらや大湿原、就寝前の静かな部屋にいると聞こえやすくなるのです。(Wikipediaより)
環境スペースにも時々、このようなお問い合わせをいただくことがあります。
夜、周りの雑音が気になって眠れないので、外の音が一切聞こえないようにしてほしい。
もちろん、ご希望通りに防音しようと思えばできなくはないのですが・・・
録音スタジオや聴覚検査室などでない限りは、こういった科学的な理由から「静かすぎる場所はかえって落ち着かない」ことをご説明して、適度に雑音が残る状態になるようにご提案させていただくケースもあります。