映画館・シアターの防音工事
防音性能・音場環境を整えて、お客様にとって快適な映画館を!
映画館・シアター(劇場)は、外部施設に音漏れなどの迷惑をかけることなく、外部騒音に影響を受けずにゆっくりくつろぎながら上映を楽しめる環境であることが求められます。
映画館・シアターに求められる音響条件に下記4つがあります。
- 1. 外へ漏れる音、振動が問題にならないこと
- 2. 外部からの騒音や設備騒音が少なく静かであること
- 3. 室内が響きすぎたり音質を悪くする反射音が無いこと
- 4. 映像が見やすく、くつろげる空間であること
映画館・シアターに求められる音響条件
・外に漏れる音、振動が気にならないこと
・外部からの騒音や設備騒音が少なく静かであること
・室内が響きすぎたり音質を悪くする反射音が無いこと
1. 遮音・防音設計
遮音計画は「音」と「振動」の両面から検討を行う必要があります。
シアターなどの場合、室内で出る音が隣接する部屋や隣戸に迷惑にならないように、音はもちろんのこと振動も遮断する必要があります。
さらに、隣室や屋外からの騒音が映画鑑賞に支障がないようなレベルにすることが重要です。
特にシネマコンプレックスのように、いくつものシアターが隣接する場合は、シアター間の防音性能/防振性能が重要となります。
振動は建築の構造体を伝搬して内装材を揺らし、室内に音として放射されます。
例えば、機械設備、歩行音や扉開閉時の衝撃音です。
さらには、スタジオから放出される音への配慮も大切です。
シアターや映画館の操作室でのモニター音についても、建物自体に入射して振動成分として構造体を伝幡することになり、音として再び放射される「二次固体音」の成分も無視できなくなります。
また、通常施工される間仕切り壁(固定遮音壁)だけでは、どんなに壁を厚くしても二次固体音の影響によって、一定の遮音性能が得られなくなります。
これは振動の減衰が、音の減衰と比べて小さいことが原因です。
遮音等級と聞こえの関係(一般住宅) 「建築物の遮音性能基準と設計指針」
日本建築学会より
オーディオルーム
遮音等級 | D-65 | D-60 | D-55 | D-50 | D-45 | D-40 | D-35 | D-30 | D-25 | D-20 | D-15 |
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音の聞こえ方 | 通常では 聞こえない |
ほとんど 聞こえない |
かすかに 聞こえる |
小さく 聞こえる |
かなり 聞こえる |
曲が ハッキリ 分かる |
よく 聞こえる |
大変良く 聞こえる |
うるさい | かなり うるさい |
大変 うるさい |
遮音設計では、直接音だけでなく、壁・床・天井に入射した音が物体内を伝搬し隣室に放射する音(固体伝搬音)があるため遮音・防振構造(浮遮音層)が必要となります。また、サブウーハーの振動を伝搬させないような床の防振構造が必要不可欠となります。
遮音・防振構造 構造図
映画館の良い室内環境をつくりだすために、室内の静けさが必要となります。
外部からの騒音及び内部の設備騒音です。
内部の設備騒音の目標は下記に示す表よりNC-25~35程度になります。
また、外部騒音は、建設場所の事前調査が必要となります。
用途別室内騒音の許容値
dBA | 20 | 25 | 30 | 35 | 40 | 45 | 50 | 55 | 60 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
NC~NR | 10-15 | 15-20 | 20-25 | 25-30 | 30-35 | 35-40 | 40-45 | 45-50 | 50-55 |
うるささ | 無音感 |
非常に静か | 特に気に ならない |
騒音を 感じる |
騒音を無視 できない |
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会話・電話への 影響 |
5m離れてささやき声が聞こえる | 10m離れて会話可能電話は支障なし | 普通会話(3m以内)電話は可能 | 大声会話(3m)電話やや困難 | |||||
スタジオ | 無響室 |
アナウンス |
ラジオ |
テレビ |
主調整室 |
一般事務室 | |||
集会・ホール | 音楽堂 |
劇場(中) |
舞台劇場 |
映画館 |
プラネタリウム |
ホールロビー | |||
病院 | 聴力検査室 | 特別病室 |
手術室・病室 |
診療室 |
検査室 |
待合室 | |||
ホテル・住宅 | 書斎 |
寝室・客室 | 宴会場 |
ロビー | |||||
一般事務室 | 重役室 大会議室 |
応接室 |
小会議室 |
一般事務室 |
タイプ 計算機室 |
||||
公共建物 | 公会堂 |
美術館 博物館 |
図書閲覧 | 公会堂 兼体育館 |
屋外スポーツ施設(拡) | ||||
学校・教会 | 音楽教会 |
講堂 礼拝堂 |
研究室 | 普通教室 | 廊下 | ||||
商業建物 | 音楽喫茶店 宝石店 |
書籍店 美術品店 |
銀行 レストラン |
一般商店 食堂 |
遮音構造を貫通させる空調ダクトや電気設備、防災設備、並びに弱電設備の配管処理を同じ遮音レベルで行う必要があります。
貫通部の遮音処理や浮構造部分での振動絶縁処理を、確実に行う必要があるのです。
機械設備の音だけでなく空調設備については、空調ガラリやダクトの管壁からダクトに侵入した音が伝搬して、隣室のガラリやダクトの管壁から透過する「クロストーク」の影響も注意が必要です。
2. 室内音響設計
(1)室内の響き(残響時間)
快適な音空間を実現するためには、“響き”だけではなく、反射音を無くすことが大切です。
そのためには、響きの長さといえる『残響時間』の調整と、響きの質といえる『音質と音色』の調整が必要です。
平行する大きな反射面がある場合は、音響障害となりますので、対策を立てます。
残響調整のポイントと、反射面への対策について解説します。
V;室容積、S;表面積、α;平均吸音率
(2)音響障害の防止
音場環境の計画は、部屋の用途に応じた適切な響きとするために室内状・内装材(吸音・反射)の検討を行います。
まず、シアターの形状が出来るだけ不整形になるように考えます。
例えば、壁や天井を傾斜形状にしたり、やや響きの長い設計にするなどです。
これは、室内に平行となる面がないようにして、音響の拡散性を高める、音の障害を無くす為に行われます。
向かい合う壁が完全な平行面であるとき、壁面間で音が減衰せずに行き来します。
よって、高音域では「フラッター・エコー」を、低音域では「定在波」と呼ばれる音響的な障害が発生するのです。
理由としては、近年の音響再生方式の変化といえるでしょう。
大音量の再生が可能なスピーカーの開発、サラウンドスピーカーの多様化、編集方法の変化など、シネマの反射の影響を少なくすることで、素材そのものの音を聴衆にダイレクトに伝えるように部屋全体が吸音仕上げとなっています。
■平行する大きな反射面の対策
拡散処理(形状変形) | 部屋の形状を変形する拡散体を取り付ける |
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吸音処理 | 内装仕上げを吸音構造にする吸音パネルを取り付ける |
●残響時間は、部屋の大きさ・室内の容積に比例して長くなります。
●最適な残響時間:室内の平均吸音率は20~30%が目安。